理想解、という発想法

TRIZの理論の中に『理想解』という考え方があります。理想の解を次のように定義しているのですが、その意味するところはとても示唆にとんでいると感じます。

・理想性=効能/(コスト+害)
・発展の方向は理想性の向上する方向へ発展する
・最終的な理想解は、コストなし・害なしで機能する(効能をもたらす)こと

今日はTRIZ理論としての考察ではありません。ビジネス的な側面とアイデア出しの側面から、これが面白いと感じますのでそれを述べたいと思います。

イデア出しの組織に持ち込まれるテーマは漠としたものであることが結構あります。どうしたら商品がうれるようになるか、そのアイデア。などといったものも良くあります。テーマを明確にしてから依頼してくださいといえることばかりではないのが現実だとおもいます。(余談:漠としたクライアントの依頼から具体的な提案をかえすのは、コンサルティングファームでいえば戦略系などでは求められるものと聞きます。)

持ち込まれたテーマがどうすると理想的な状態か、これはメンバー間であれこれと意見が分かれます。人間の多様性がアイデアの質と量を生むので意見が複数出るのはいいことですが、方向性そのものはあるレベルでは合意形成できている必要があります。このとき、理想性とは、効能をそのコストと害で割ったものと考えよう。それが極めて向上することを理想状態としよう。と。。。

ビジネス面の話をします。優れたビジネスモデルがつぎつぎ現れます。最近の動向では、ドロップシッピングというビジネスモデルがあります。

■シャツシティー
 http://www.shirtcity.co.jp/
 デザインして買う(あなたの好きなデザイン・写真・言葉をTシャツに)
 デザインして売る(あなたの作ったデザインでWEBショップ。リスクなし、コストなし)

■ホンニナル出版
 http://www.honninaru.com/index2.cfm
 自前の資金ゼロで出版。在庫の心配なし。

これまで、オリジナル商品にはオーダー100個以上とか発注額20万円以上といったメーカー最低発注額がありました。ロングテールな消費動向の昨今、たくさん作り在庫しておく、というスタイルはある種の市場エリアでは本質的に好ましくないビジネススタイルです。これに対してドロップシッピングは、必要なものが必要な分だけ一小口から生産されます。オリジナルショップを持つにしてもリスクとコストが無く、売れたら諸経費を抜いてWEBショップオーナーは利益が手に入ります。これは理想性の意味では、コストと害(リスク)がかなりゼロに近く非常に理想性の高いビジネスモデルといえそうです。

いまのドロップシッピングは、ある種の高度な印刷技術で一品モノの商品をつくってみせているビジネスです。Tシャツ、マグカップ、本。そういったもの表面に個別のコンテンツを印刷、それがオリジナルの商品に。この先に、理想性をさらに上げるとしたら分母(コスト、害)はあまり下がらないでしょうから、分子(効能)が向上するだろうと思われます。今の技術は、平面もしくは複雑な形状の面への印刷、といったものですが、これが単に印刷ではなく、対象物を加工して立体的な形状を一品ごとに作り出す技術、つまり「立体構造の印刷技術」ともいえるものが出てくることも考えられます。

近くのショッピングセンターに行くと射出成型プラスチックのいすやCDラックなどがたくさんあります。たとえば、未来のドロップシッピングでは射出成型機が一品もののプラスチック立体構造物を作ってくれる。たとえば、私のデザインしたイス、僕のデザインしたCDラック、といった具合に。(現在は金型の製造などの非常に難しい問題がありますが、将来はデータに応じて可変な金型セットの開発や、光造形技術の革新で低コスト、安全、高速にデータのものを作ってくれる技術発展などがあるかもしません。)

「理想解」という言葉が含む示唆は非常に深い、そう思います。